Saturday, March 23, 2013

Kurt


時々、無性にNirvanaが聞きたくなる時がある。

決まって、少し心が塞いで、不安定になる時だ。聞くと、心がすこし落ち着く。けれどすっきりするというわけでない。ちょうど膝を抱えて視線を地面に落とすことで、ちょっとした簡易のシェルターに身を寄せたといったたぐいの安心感だ。


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ずいぶん前に、香港のキャバクラで飲んだことがある。海外の日本駐在員相手の店で、たぶんこの類の店の中では比較的上品な店だったが、酔っぱらった客が店の女の子体を酔いに任せて触ろうとする、店の女の子がうまいことなだめすかしながら、客の手をかわそうとするやり取りがとても面白かった。

しばらく飲んでいると、若い男が入ってきた。店の従業員とのやりとりから馴染みなんだろうということは分かったが、ジーンズにカジュアルなシャツと他の客とは明らかに違う。すでに酔っぱらっているようで、テーブルに案内されるなり、ソファーに横たわった。

しばらくすると、男は、カラオケでSmell Like Teenagerを歌いだした。下手ではなかったが、やはり異質だった。そして歌い終えると、またしばらくソファーに横になって、飲み物を飲んだ後、ふらふらと出て行った。

ちょっとした、なりきりKurtってことだろうね。

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Kurtがなくなって、もう20年ちかく。写真展「KURT – JESSE FROHMAN」を渋谷に見に行く、渋谷の町中を歩くのって久しぶり。実家が渋谷区なので、渋谷駅はよく利用するのに、駅のターミナルからでたことがしばらくない。汚くて子供の町という印象を捨てきれなくて、すきなれない。

大学に入ったばかりのころ、渋谷で飲んだ。夜中になって帰ろうと、駅の入り口で、若い男が倒れている。たぶん、よっぱらいだろう。なにかずっと吐いているのだけど、誰もが冷やかに通り過ぎて行った。

写真撮影時のKurtもドラッグ、薬、酒の三つ巴で、ひどい状態だったいう。彼はずっとサングラスをかけていて目は見えないのだけど、彼は、人体模型のTシャツを着ていて、そいつの目がこちらをにらんでいるように見える。



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